結婚するには動機がある。自分の一生をかけた選択なのだから、動機も真剣なものとなろう。Tシャツを買うわけではあるまいし、肌触りがいいとか、値段が安いとか、柄がいいとか、着るものがなくて、というような、あるようでないような理由では納得がいかないかもしれない。とくにまだ結婚していない女性にとっては。けれども、はっきりとした動機がなくてはいけないのだろうか。私は疑わしく思っている。そりゃあ、「大好きになったから」とか、「子供が欲しかったから」とか、「温かい家庭をつくりたかったから」というのは、立派な動機だとは思うが、あまりにそれに縛られてしまうと、せっかくの結婚を台なしにしてしまう可能性がある。残念なことだが、結婚すると「大好き」だった彼を「嫌い、あんなヤツ。もう顔も見たくない」と思う日もある。もちろん、そんな日はないほうがいいけれど、でも、やっぱりある。「好き」という気持ちは、それほど確固たるものではないからだ。人間の感情なんていつもゆらゆら揺れているものだ。「子供が欲しい」という動機で結婚しても、実際結婚後に果たされるかどうかわからない。赤ちゃんができない可能性もあるし、相手が欲しがらないとか、仕事の都合とか、とにかく結婚すれば必ず子供ができるとは限らない。人間が自分で決定できるものなんて、たかが知れている。「温かい家庭」にしても、皆がそれをつくろうと努力しながら、やはり思うようにいかないのが現実だろう。もちろん、結婚するときに動機があるのは自然なことだ。誰もが「こうこうこうだから私は結婚する」という理由をそれぞれ掲げて、結婚を決心する。ただし、それはあくまでも「そうなったらいいな」という一種の夢にとどめておくべきだ。「こういう動機で結婚したのだから、なんとしてもそれを果たさなくてはいけない」と思うと、単なる動機が果たすべきノルマとなって、新婚夫婦の上に君臨するようになってしまう。それが努力して果たされるものならまだいいが、「子供」とか「温かい家庭」となると、人の努力を超えたところにあるから、下手をすると夫婦を蝕む結果ともなってしまう。そんなことになるくらいなら、最初から動機などないほうがマシだ。
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