大学生やOLになってからブランドブームに接し、バブルで贅沢を定着させた1950年代から1960年代生まれの層(第1世代)と、幼少期からブランドに当たり前のように接してきた1970年代以降生まれの層(第2世代)とでは、ブランド観や消費行動は大きく異なっている。第1世代は、自らの成長とともに幾度ものブランドブームやバブル経済を経験するなかで鑑識眼を「成長」させつつ、エルメスに行き着いた。この第1世代が「ケリー」や「バーキン」など、とてもわかりやすい「ブランド品」の熱烈な支持層だろう。「モノ」より「ブランド」に憧れてきた世代だとも言える。老舗プレミアム・ブランドを頻繁に引き合いに出す人気女性作家やエッセイストなどは、ほぼこの層に入り、特有のブランド観を描いている。この上の世代では「舶来品」、下の世代では「日用品」として、ブランド品に対する距離感は異なる。1973年生まれの筆者や友人たちの共通見解としても、第1世代の「ブランド」感覚にはずれを感じるところが大きい。第1世代はなぜ「エルメス」に至るまで、ブランド熱をエスカレートさせたのだろう。いかに品質がよいとはいえ、中古車が買えるほどの価格の鞄が「ブーム」となるのは冷静に考えれば不思議な事態である。明確な理由を特定するのは難しく、さきに述べたように世界史のなかでときどき登場する極端なファッションの一例として捉えることも可能かもしれない。ただし、この世代が時代の過渡期にあたる現象を凝縮して体験した最たる層であることは指摘できよう。彼女たちの前後では、女性に与えられた選択肢も可能性も、全くといっていいほど異っている。それより上の専業主婦世代と、すぐ下のキャリア世代の狭間で自らのアイデンティティを確立するのが難しい。